フッ素は、自然界に存在している元素で、私たちが普段から口にしている海藻やイワシ、エビなどにも含まれています。ただ、一般的にフッ素は、栄養素というより「むし歯予防に効果がある物質」というイメージの方が強いです。実際、フッ素によるむし歯予防効果は科学的にも証明されており、WHOも口腔ケアにフッ素を活用しましょうと提唱しています。とくに歯科医院で受ける「フッ素塗布」は、むし歯予防効果が高いため、多くの方に推奨できます。今回はそんなフッ素のむし歯予防について、五泉市駅前の浅井歯科医院がわかりやすく解説をします。
目次
▼フッ素でむし歯を予防できるのはなぜ?
そもそもフッ素はなぜむし歯予防に効果があるのか?そんな疑問を持っている方は比較的多いことでしょう。当然ですがフッ素は目に見える物質ではありません。そこでぜひとも知っておいていただきたいのが、フッ素がむし歯予防に寄与するメカニズムです。
◎歯の再石灰化を促進する
フッ素によるむし歯予防効果で第一に知っておくべきは、歯の再石灰化を促進する作用です。私たちの歯は、酸性の刺激を受けると歯の表面のエナメル質が溶けていきます。これを専門的には「脱灰(だっかい)」といいます。お口の中に適切な量の唾液が分泌されていれば、溶け出したエナメル質を元に戻す「再石灰化」が起こります。唾液中には、エナメル質の成分となるリン酸カルシウムが豊富に含まれているのです。歯の近くにフッ素が存在していると、この再石灰化が起こりやすくなるため、結果としてむし歯予防に効果的です。
◎歯を強い組織に作り変える
再石灰化が起こる際に、フッ素がエナメル質の中へと入り込むと、歯が新しい組織に作り変えられます。本来は「ハイドロキシアパタイト」という構造をとっているエナメル質が「フルオロアパタイト」へと変化するのです。ちなみにフルオロ(fluoro)とは有機化合物中のフッ素を表す言葉で、フルオロアパタイトではエナメル質中にフッ素が組み込まれることを意味します。そしてフルオロアパタイトは、ハイドロキシアパタイトよりも酸性刺激への抵抗力が強いことから、この点においてもフッ素がむし歯予防効果を発揮することになるのです。
◎フッ素がむし歯菌の活動を抑える
フッ素入りの歯磨き粉やフッ素塗布で使用するフッ素ジェルには、むし歯菌の活動を抑制する効果も期待できます。むし歯菌の酸を作り出すのを邪魔したり、繁殖するのを抑えたりするため、結果としてむし歯予防に寄与します。
▼フッ素塗布が重要な理由
むし歯予防を効率良く進めていく上では、フッ素入り歯みがき粉の使用だけでなく、歯科医院でのフッ素塗布も欠かせません。一般の方からするとどちらも同じようなものに見えるかもしれませんが、実はむし歯予防の効果が大きく異なります。なぜなら歯科医院のフッ素塗布で使用するフッ素ジェルには、フッ素入り歯みがき粉の6倍程度のフッ素が配合されているからです。具体的には、市販の歯みがき粉のフッ素濃度が最大で1,500ppmであるのに対し、歯科医院のフッ素塗布で用いられるフッ素ジェルは9,000ppmのフッ素が配合されています。その分だけ安全性に配慮しなければならないことから、高濃度のフッ素ジェルによるフッ素塗布は、原則として歯科医師や歯科衛生士が行うことになっています。
▼子どもは大人よりもフッ素によるむし歯予防が大切
子どもの歯と大人の歯には、明確な違いがあります。まず子どもの歯である乳歯は、エナメル質の成熟度が低く、むし歯菌が作り出す酸によって溶かされやすくなっています。また、乳歯のエナメル質と象牙質は、永久歯の半分の厚みしかないことから、一度、むし歯になるとあっという間に神経まで侵されてしまうのです。そのため、フッ素で歯を強くする効果やむし歯菌の活動を抑える効果が大人よりも重要となります。
ちなみに、2023年には各年代におけるフッ素入り歯みがき粉の推奨濃度が改訂されました。現状は5歳までは「1,000ppm」、6歳以降すべての人は「1,500ppm」と高めに設定されるようになりましたので、小さなお子さんがいらっしゃるご家庭でも推奨の範囲内で最も高い濃度のフッ素入り歯みがき粉を使うのがおすすめです。それに加えて、3~4ヵ月に1回の歯科医院でのフッ素塗布を続けることで、子どものむし歯予防の効果を大きく上昇させられます。
▼まとめ
今回は、むし歯予防に効果的なフッ素の特徴やフッ素塗布の重要性について、五泉市駅前の浅井歯科医院が解説しました。フッ素は歯の再石灰化作用を促し、酸への抵抗力を高めてくれる物質なので、口腔ケアには積極的に活用していくのが望ましいです。フッ素塗布に関しては歯科医院でなければ受けられませんので、子どものむし歯予防を徹底したいという方はいつでもお気軽に当院までお越しください。定期検診では、フッ素塗布だけでなく、歯のクリーニングや歯石取り、ブラッシング指導なども併せて行います。